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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)153号 判決 1986年5月30日

原告 地銀生保住宅ローン株式会社

右代表者代表取締役 大田満男

右訴訟代理人支配人 高田稔

右訴訟代理人弁護士 上野隆司

高山満

被告 渡辺功秀

長谷川誠

右両名訴訟代理人弁護士 東由明

被告 杉浦逞五

杉浦洋子

主文

一  被告杉浦逞五及び被告杉浦洋子と被告渡辺功秀との間において、

1  別紙物件目録記載一の土地につき、昭和五九年八月一〇日賃貸人を被告杉浦逞五及び同杉浦洋子、賃借人を被告渡辺功秀とし、借賃一ヵ月一平方メートル当り金三〇円、支払期期間内前払済、存続期間昭和五九年八月一〇日から五年、譲渡、転貸ができる、との特約をもつて、

2  別紙物件目録記載二の建物につき、昭和五九年八月一〇日賃貸人を被告杉浦逞五及び同杉浦洋子、賃借人を被告渡辺功秀とし、借賃一ヵ月五万円、支払期期間内前払済、存続期間昭和五九年八月一〇日から三年、譲渡、転貸ができる、との特約をもつて、

締結された賃貸借契約は、いずれもこれを解除する。

二  被告渡辺功秀と被告長谷川誠との間において、別紙物件目録記載二の建物につき、昭和五九年一一月一日転貸人を被告渡辺功秀、転借人を被告長谷川誠とし、賃料一ヵ月金五万円、支払期翌月分を毎月末日払、期間二年、敷金金一〇万円との約定をもつて締結された賃貸借契約は、これを解除する。

三  被告渡辺功秀は、別紙物件目録記載一の土地につき、浦和地方法務局川口出張所昭和五九年八月二二日受付第三六七九一号の、同目録記載二の建物につき、同法務局同出張所昭和五九年八月二二日受付第三六七九二号の、各賃借権設定登記の抹消登記手続をせよ。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

理由

一  被告渡辺及び被告長谷川について

1  ≪証拠≫によれば請求原因1ないし3の事実が認められ、(請求原因2のうち登記の事実については当事者間に争いがない。)右認定に反する証拠はない。

2  請求原因4、5の事実は当事者間に争いがない。

3  ≪証拠≫によれば、原告は本件土地建物に対する抵当権にもとづいて競売を申立て、請求原因6記載のとおり競売開始決定を得、現に競売手続が進行中であるが、右手続における指定評価人の評価によれば本件土地建物の評価額は、被告渡辺に対する右賃借権が設定されていないとした場合でも、合計一三五九万五〇〇〇円で、右抵当権の被担保債権の残元本一五二三万七二二六円にも満たないところ、右賃借権の存在により本件建物の評価額は三〇パーセント減価が相当とされていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

一般に抵当物件に賃借権が設定され、更にはこれが登記されている場合、抵当物件の取引価額が低くなることは経験則上明らかであり、このことは競売にあつても同様で、しかも被告杉浦両名と被告渡辺間賃貸借契約は、借賃が前払済で、譲渡転貸可能であるなど賃貸人(競落人)に甚だ不利な内容があるため、必然的に競売申出が制限され、このまま競売を実施した場合、本件土地建物の競落価額は相当低下することが推認され、これに右評価人の評価額を考慮すると、被告渡辺に対する賃借権の設定により、原告は被担保債権を相当額回収し得ないおそれがあり、右賃借権は抵当権者である原告を害しているというべきであつてこれを解除するのが相当である。

次に、被告渡辺と被告長谷川間の本件建物に対する転貸借関係は被告杉浦両名と被告渡辺間の原賃貸借を解除すれば、転貸借まで解除する必要がないと考える余地もあるが、民法三九五条による解除は判決によりその効力が生じるのであり、その効力を画一的かつ明確にする必要があること、又実際上転貸借が対抗要件を備えるとその無効を再度主張するのに無用な労力を必要とすること、その結果競売価格の下落をひきおこすことなどを考慮すれば同条但書は転貸借をも含むと解されるので、被告渡辺と被告長谷川間の賃貸借をも解除すべきものと考える。

二  被告杉浦両名は、適式の呼出を受けたのに本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないので、請求原因事実を明らかに争わないものと認めこれを自白したものとみなす。

右事実によれば、前説示のとおり被告杉浦両名に対する本訴請求は理由がある。

よつて、原告の本訴請求は理由があるのでこれを認容

(裁判官 小田泰機)

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